BCG解説

ワクチン概要

予防対象となる病気

病名:結核(Tuberculosis)
病原体:結核菌(Mycobacterium tuberculosis)

結核は空気感染によって広がり、肺を中心に全身に影響を及ぼす感染症です。乳幼児が感染すると粟粒結核や結核性髄膜炎などの重篤な病型を発症するリスクが高く、早期予防が重要です。

BCGとは

BCGとはフランス語で「Bacille de Calmette et Guérin (カルメット・ゲラン桿菌)」の略で、開発者カルメット(Calmette)とゲラン(Guérin)の名前に由来しています。

BCGワクチンは、弱毒化された生きたカルメット・ゲラン桿菌(BCG菌)を含む生ワクチンです。
日本では専用の器具「管針(かんしん)」を皮膚に押し当てる経皮接種法が採用されており、この跡が小さな丸い針跡として残るため、俗に「ハンコ注射」とも呼ばれています。

海外の多くの国では注射器を使った「皮内接種法」が行われていますが、日本では跡が目立ちにくい経皮法が一般的です。

BCG

接種対象と方法

  • 対象年齢:1歳未満(定期接種の場合)
  • 標準的な接種期間:生後5か月〜8か月未満
  • 接種方法:専用の管針を用いて皮膚にワクチンを圧接する経皮接種法(ハンコ注射)。
  • 接種部位:上腕外側中央部に行います。
  • 回数:通常1回で効果が期待されます。

禁忌

  • 明らかな発熱がある者
  • 重篤な急性疾患にかかっている者
  • 免疫不全のある者、免疫抑制治療中の者
  • 本剤成分に対して重度の過敏症を示したことがある者

副反応

  • 通常の反応:接種後1〜2週間で局所に赤みや小膿疱が生じ、かさぶたとなり、瘢痕を残します。これは正常な免疫反応です。
  • よくある反応:腋の下のリンパ節が腫れることがあり、接種後4〜6週で2cm程度の腫れが出ることがあります。通常は自然に治りますが、3cm以上になったり化膿して膿が出る場合もあります。皮膚に湿疹のような反応が出ることもあります。
  • まれ〜極めてまれな反応:ショック、アナフィラキシー、骨・関節の病変、播種性BCG感染症(特に免疫不全児に発生)など。頻度は多くありませんが、治療が必要となることがあります。

異常が見られた場合は、必ず医療機関にご相談ください。

コッホ現象

定義

BCG接種後に、通常より早期(1〜2日後、遅くとも7日以内)に局所の強い発赤や腫脹が現れる現象を「コッホ現象」と呼びます。これは、すでに結核菌に感染している可能性を示唆する重要な所見です。

通常反応との違い

  • 通常のBCG反応
    接種10日頃から赤みや小膿疱が出現し、1〜2か月後にピーク。その後かさぶたになり瘢痕を残して治癒します。
  • コッホ現象
    接種直後から数日以内に強い赤み・腫れ・硬結が現れ、通常よりも早く強い反応が出現します。その後は徐々に軽快していきます。

発生機序

コッホ現象は、既に結核菌に感染して免疫(感作)が成立している状態でBCG菌を接種すると起こります。免疫細胞がすでに「結核菌を認識」しているため、通常の一次反応ではなく、即時に過敏な反応が出現するのです。

意味

コッホ現象がみられた場合、結核に感染している可能性があります。

ただし、必ずしも結核感染が確定するわけではなく、非感染例でもまれに類似の反応が出ることがあります。特に乳幼児では、結核感染が重症型(粟粒結核、結核性髄膜炎)へ進展するリスクが高いため、臨床的に非常に重要なサインです。

医療機関での対応

コッホ現象は救急車を呼ぶような緊急事態ではないものの、放置してよいものではありません。

接種を受けた医療機関または保健所に相談する必要があります。翌営業日に受診しましょう。

医師は、問診や身体所見のほか、必要に応じてツベルクリン反応、胸部X線検査や血液検査などを行い、結核感染の有無を評価します。

感染が疑われる場合、イソニアジドによる予防内服 を一定期間行うことがあります。

Q&A

BCGって何の略ですか?

「Bacille de Calmette et Guérin (カルメット・ゲラン桿菌)」の略です。開発者のカルメットとゲランの名前に由来しています。

BCGワクチンはなぜ注射ではないのですか?

かつては経口接種が行われましたが効果が不十分で、その後は注射が用いられました。注射では接種痕が目立つため、日本では専用器具「管針」を皮膚に押し当てる経皮接種法が採用され、俗に「ハンコ注射」と呼ばれます。

目立たないように足やお尻に接種してもらえますか?

できません。法律で接種部位は「上腕外側の中央」と定められています。
足底部や殿部は接種部位に感染が起こりやすいなど衛生上の問題があり、また、肩に近い部分は反応が強く出やすいため、定められた部位に接種する必要があります。

効果はいつ頃から出るのですか?

個人差はありますが、正しく接種されていれば、1か月くらいで十分な免疫ができると考えられています。

接種痕は残りますか?

接種後1〜2週間で赤みや膿疱ができ、その後かさぶたとなり小さな痕が残ります。免疫がついたサインとされています。

針痕が全く見えません。きちんと接種できているのでしょうか?

反応の出方には個人差があります。3か月くらいたってから反応が出ることもあります。心配な場合は接種を受けた医療機関や保健所にご相談ください。

ワクチン液をなめてしまったのですが大丈夫ですか?

ワクチン液をなめて口の中に入っても、胃酸で菌は死んでしまいますので通常は心配ありません。ただし体調の変化があれば、医師にご相談ください。

接種した部分に吐いたミルクがつきました。どうしたらいいですか?

清潔な脱脂綿やガーゼで優しく拭き取ってください。アルコールや消毒液はBCGの菌を殺してしまう可能性があるため使用しないでください。雑菌が入ってしまう心配もありますので、その後の経過をよく観察してください。

接種当日に水泳や運動をしてもよいですか?

接種当日は激しい運動を避けてください。特に水泳は接種部位がジクジクしていると雑菌が入る可能性がありますので控えてください。

コッホ現象とは何ですか?

BCGを接種した直後から数日以内に強い発赤や腫れが出る反応を指します。すでに結核感染がある可能性を示すサインです。
詳しくは本文の「コッホ現象」をご覧ください。

接種できないのはどんな人ですか?

明らかな発熱がある方、重い急性疾患のある方、免疫不全・免疫抑制治療中の方、ワクチン成分に対する重度の過敏症がある方などは接種できません。

1歳以上でも接種できますか?

接種は可能ですが、定期接種は1歳未満が対象です。1歳以上は任意接種となります。

海外に行く予定があります。新生児でも接種できますか?

定期接種の対象は1歳未満です。生後すぐでも接種は可能ですが、早期に接種した場合、骨髄炎のリスク報告もあり、標準的には5か月から8か月未満で接種することが推奨されています。渡航先の結核の流行状況によっては出国前に接種することを検討しますので、医師にご相談ください。

海外から帰国しましたが接種していません。どうしたらよいですか?

1歳未満であれば定期接種が可能です。1歳を過ぎている場合は任意接種となりますが、未接種であれば接種することをおすすめします。海外で接種を受けている場合は再接種は不要です。

主な副反応は何ですか?

よくあるのは腋の下のリンパ節が腫れる反応で、接種後4〜6週で2cm程度の腫れが出ることがあります。通常は自然に治りますが、3cm以上になったり化膿して膿が出る場合もあります。皮膚に湿疹のような反応が出ることもあります。ごくまれに、アナフィラキシー、骨や関節に病変が出ることも報告されています。頻度は多くありませんが、治療が必要にあることもあるため、異常がある場合は医療機関にご相談ください。

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