ワクチン概要
ロタウイルスワクチンとは
ロタウイルスワクチンは、重症のロタウイルス胃腸炎を予防するためのワクチンです。生ワクチンに分類され、注射ではなく経口投与(飲むタイプ)で接種します。感染そのものを完全に防ぐわけではありませんが、重症化を大幅に減らす効果があります。日本では2020年10月から定期接種に指定されました。
予防対象となる病気
病名:ロタウイルス胃腸炎(rotavirus gastroenteritis)
病原体:ロタウイルス(rotavirus)
ロタウイルスは乳幼児の急性胃腸炎の主な原因のひとつです。発熱、嘔吐、水のような下痢を繰り返すのが特徴で、症状が強いと脱水症状を起こし入院が必要になることもあります。特に3歳未満の乳幼児は重症化しやすく、命にかかわることもあります。
ロタウイルスってどんなウイルス?
ロタウイルスは非常に感染力が強く、少量でも感染します。便や嘔吐物、手指などを介して容易に広がるため、家庭や保育園などで集団感染を起こすことがあります。一度感染しても再感染することがあり、ただし2回目以降は軽症で済むことが多いとされています。
ワクチンの効果と同時接種について
ワクチンの効果
ロタウイルスワクチンの導入後、国内での重症胃腸炎や入院例が大きく減少しました。ワクチンは感染そのものを完全に防ぐわけではありませんが、接種している子どもは感染しても症状が軽く済むことが多く、脱水や入院を防ぐ効果が期待できます。また、集団接種が進むことで、社会全体でも感染の流行を抑える効果(間接効果)があります。
他のワクチンとの同時接種
ロタウイルスワクチンは、生後2か月から始まるほかの定期接種(五種混合、B型肝炎、ヒブ、小児肺炎球菌など)と同時接種が可能です。当院では、同時接種を推奨しています。同時に受けることで通院回数を減らし、スケジュールを効率よく進められます。国内外の研究でも安全性は確認されていますので、安心して受けていただけます。
ワクチンの種類と違い
現在、日本で使用されているロタウイルスワクチンは次の2種類です。
| 製品名 | 製造元 | 型の種類 | 接種回数 | 特徴 |
|---|---|---|---|---|
| ロタリックス(Rotarix) | グラクソ・スミスクライン社 | 1価(1種類のウイルス株) | 2回(生後6週〜24週までに完了) | 世界100か国以上で使用され、安全性と有効性が確立されています。 |
| ロタテック(RotaTeq) | MSD社 | 5価(5種類のウイルス株) | 3回(生後6週〜32週までに完了) | 複数の株に対応し、幅広い感染予防効果があります。 |
当院で使用しているワクチン
当院では、主にロタリックス(Rotarix)を採用しています。2回接種で完了するため、他の定期接種とのスケジュール調整がしやすく、交差免疫によって5価ワクチンと同等の重症化予防効果も得られます。ご希望や他院での初回接種状況により、ロタテックの利用も可能ですのでご相談ください。
接種時期とスケジュール
ロタウイルスワクチンの接種は、早めの開始が大切です。初回接種の上限を過ぎると、定期接種として受けられなくなるため注意が必要です。
| ワクチン | 初回接種開始 | 最終接種期限 | 回数 |
|---|---|---|---|
| ロタリックス(Rotarix) | 生後6週〜14週6日までに開始 | 24週までに2回完了 | 2回 |
| ロタテック(RotaTeq) | 生後6週〜14週6日までに開始 | 32週までに3回完了 | 3回 |
※どちらも4週以上の間隔をあけて接種します。
※腸重積症のリスクを考慮し、初回は生後15週以降には開始できません。
副反応と受診の目安
よくある症状
- 一時的な下痢や嘔吐
- 発熱
- 不機嫌になる
これらは多くが2〜3日以内に自然におさまります。
自宅でのケア
- 水分をしっかりとる
- 安静に過ごす
- 必要に応じて医師の指示で解熱剤を使用
受診が必要なとき
- 嘔吐や下痢が長く続く
- 水分がとれない
- 高熱が続く
- 機嫌が悪く、ぐったりしている
- 腸重積を疑う症状(お腹の痛み・繰り返す嘔吐・血の混じった便など)がある
特に、接種後1〜2週間以内にこれらの症状が見られた場合は、早めに医療機関を受診してください。
腸重積症について
腸重積症について
腸重積症(ちょうじゅうせきしょう)は、腸の一部が隣の腸の中に入り込んでしまう病気です。この入り込みによって腸の通り道がふさがれ、血の流れが悪くなることで強いお腹の痛みや嘔吐を起こすことがあります。
主に5か月〜2歳くらいの乳幼児に多く見られ、突然激しく泣き出したり、嘔吐を繰り返したり、血の混じった便が出ることがあります。早期に治療すれば多くの場合は元気に回復しますが、放置すると腸の血流が途絶えて重症化することもあるため、次のような症状が見られた場合はすぐに医療機関を受診してください。
- 突然不機嫌になったり、泣き出してお腹を痛がる様子を繰り返す
- 嘔吐を繰り返す
- 血が混じった便が出る(いちごジャム状の血便)
- 顔色が悪い・ぐったりしている
Q&A
Q1. ロタリックスとロタテック、どちらを選べばいいですか?
どちらも厚生労働省に承認された安全で効果のあるワクチンです。当院では2回接種で完了するロタリックスを主に採用しています。初回に受けた製剤は、同じ種類で完了するのが原則です。
Q2. 飲ませたあとすぐに吐いてしまいました。再接種が必要ですか?
一部を吐き出しても、体内に入った量で十分な効果が得られることが多く、通常は再接種は不要です。ただし、すぐに全量を吐いた場合は、医師にご相談ください。
Q3. 同時接種は安全ですか?
はい。国内外のデータで安全性が確認されています。当院では他の定期接種と同時に行うことを推奨しています。
Q4. 下痢をしているときでも接種できますか?
軽い下痢であれば接種可能な場合もあります。症状が強いときは延期することがありますので、事前に医師にご相談ください。
Q5. 初回接種の標準的接種期間が出生14週6日後までとされているのはなぜですか?それより後に接種を受けることはできますか?
0歳児は、月齢が進むと腸重積症という病気にかかりやすくなります。また、ロタウイルスワクチンの初回接種から約1~2週間は腸重積症のリスクが増すという報告もあります。そのため、腸重積のリスクを減らす目的で、初回接種は出生14週6日後までに受ける必要があります。出生15週0日以降に初回接種を開始することはできません。
Q6. 接種前後の授乳は避けた方がよいですか?
哺乳後は嘔吐する可能性があるため、接種後は30分ほど間隔をあけて授乳するのがおすすめです。また、同時接種の場合は、注射で泣いた際に嘔吐しやすくなるため、接種の1時間前までに授乳を済ませてご来院ください。
用語のやさしい説明
- ロタウイルス:乳幼児に多いウイルス性胃腸炎の原因。嘔吐や水様性下痢を起こす。
- 経口投与:口から飲む方法で行うワクチン接種。
- 腸重積症:腸の壁が隣の壁に入り込むことで腸の血流が悪くなり症状が出る病気。早期の受診が重要。
→ 詳しくはこちら(腸重積症について) - 生ワクチン:毒性を弱めた病原体を使ってつくるワクチンで、強い免疫を得られる。


